内外装業者の選び方
2010年5月18日飛部会発表資料
佐谷恭
佐谷恭
飲食店を開業しようとして、最初にぶつかるの壁が「内外装をどうするか」ということ。初期投資として莫大なお金がかかるし、素人には値段の根拠も分からない。手抜き工事をされれば補修に莫大な費用と時間がかかり、店の経営を危うくするかもしれない。ここでは、パクチーハウス東京の内外装をいかにつくったかを振り返る。
1.物件選びについて
未経験者はとにかく、数をあたるに限る。スケルトン状態の物件は、経験かよっぽどの想像力がないと、その殺風景さに絶望感を味わうだけだ。僕の場合は、物件を探し始めてから決定するまで、約2カ月かけた。手探りの中から、希望する広さ(20坪前後だった)の物件をとにかく自分の目で見た。決定までに見学した物件は約30軒。「もしかしていいんじゃないか!」と素人でも直感できる物件は、次に連絡すると別の人に決まっていた...。
僕の場合第一条件として「乾杯の音頭を取る人の姿が、店のどこからでも見えること」というのがあったので、それを基準に見ていった。未経験のことに対する決断は非常に難しく、「○○日までに決めたい」「他との比較として現実的」などと考えながら結論を出すしかないと思った。結果、今のパクチーハウスの物件を見たとき(当時は海鮮料理屋の座敷だった)、多くの人が笑顔で楽しんで入る姿がイメージできたので、即決した。
不動産屋の中にはガラの悪い業者もあった。見かけがモロにヤクザっぽい人もいたし、申し込みのためには保証金と同額を入れろと言われたこともあった。事情を知らないので、そんなものかとも思ったこともある。(実際は、申し込みの際にお金は一切必要ないハズ)知らないと余計な心配が増えるので、こういう情報はぜひともシェアしておきたい。
2.内装業者の選定
知人や経験者にそれとなく聞いて、10社以上見積もりを取った。26坪の物件に対し、見積もり額は1000万円から2500万円程度。その後"600万円"と予算を伝えると、「600万円(+α)でできること」としてパース案などをもらった。その額じゃ無理と言い切る業者も半分ぐらいあった。予算を言うと、それで収まるようにしてくれる、というか、そこまでは払うものと判断されてしまうので、目が利かない場合は予算を先に言うべきでないと思った。
最も安い金額を提示した会社に話を聞いていて、「こんなに安い材料があるんです」という説明にウンザリした。安く済ませたいが、安っぽい店を作りたいわけではない。その他、A0の額を4つぐらい持参して(しかも電車で)、喫茶店で「佐谷さんのお店はこういう感じです」とプレゼンした会社があったのだが、余計なところにお金をかけすぎだと思い断った。
そんなこんなで、いったん白紙に戻してしまった。作戦を変え、契約した店舗をできるだけ壊さずに手直しする方向に。募集広告は"スケルトン渡し"だったが、残せるところは残すことで、費用を抑えることにした。契約時点では、前の店舗が営業中だったことが奏功した。毎日周辺に出入りしていたので、物件のスケルトン化を委託されていた会社の社長とも知り合うことになり、その社長に自分が作ろうとしている店のイメージを伝え「途中までしか壊さないこと」を依頼。床やベンチシート、カウンターなど最低限の工事を依頼した。また、こうすることにより、冷蔵庫などの店舗機器も譲り受けることができた。
3.仕上げ
というわけで、仕上げは自分たちで。漠然としたアイデアを建築士の友人に相談。アドバイスを受けながら、方針を決めた。むき出しのボードに珪藻土やペンキを塗り、天井の穴を修復したりした。初めての経験ばかりで、一時はどうなることかと思ったが、多くの人の協力を得て、なんとかカタチにはなった。壁の一部を塗り残すことにし、「パクチーハウスは常に未完成。常に改善すべき場所がある」ということを表現してもいる。
4.振り返って
展開が読めない中で、初期投資を抑えたことは、その後の経営に大きなプラスとなった。飲食店のセオリー本に書かれている目安金額は、鵜呑みにしない方がよい。自らが予測できる範囲でかけられる費用を算出し、頂いた見積もりは(よく分からなくても)細部を確認し、その内容が金額に合うかどうかしっかり検討したほうがよい。「こんなもんですよ」という言葉を思慮なく受け入れてはいけないし、自分が何にいくら払っているかは、しっかり把握すべきだ。
*当り前のことですが、飲食店立ち上げの際には、判断すべき項目が無数にあるので、"一般的な基準"に頼りたくなるものです。しかし、すべての業態は特殊だし、すべての物件も特殊であるので、そこに何を投資するかは自らの基準に照らし合わせるしかないのです。未経験でも、自分なりの基準を持っておくことで初めて、納得のいく妥協も可能になります。店舗づくりの第一歩にして難関ですが、それゆえに手腕が問われるところです。
