日本経済新聞 1997年9月22日(月曜日)

私たち 第61話 歩く 「現代の巡礼」
鮮烈な体験求め異国さすらう
旅先の安宿は、バックパッカーたちのサロン。ドミトリー(大部屋)で、最新情報を交換する。「面白い人に出会いたくて旅を続けている」という京都大総合人間学部の四年生、佐谷恭さん(22)は、日本でもそうした仲間とのつきあいを大事にしている。
大学入学以来、韓国からトルコまでアジア14ヶ国を回ったという佐谷さんは一年半前、関西在住の仲間と旅先で見つけたことを語り合うサークルを作った。異郷で落ち合う仲間の伝言板にしようと、インターネットにホームページも開設した。
佐谷さんは昨年夏、一ヶ月かけてイランを巡り、バスからの眺めで地平線まで広がるヒマワリ畑に出合った。イラン人と一緒にヒマワリの種を食べつづけていたせいか、美しさに感動すると同時に、「おいしそうだな」と思ったという。そんな小さな体験を語り合いながら、世界が広がっていく。
「いくら自分の足で歩いても、観光地を確認するだけの旅では面白くない」と佐谷さん。ガイドブックは持たず、人と地図を頼りに進む。心に自分だけの風景を描こうと、若者の異国巡礼の列は絶えることがない。