| 3日目(19日) 3−3 ■海へ スキューバダイビング |
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父とトモキは笑顔で陸へ上がってきた。母は「こんなにスピードだすんだもの。恐いったら、、、」とジェットスキーの恐怖を何度も繰り返していた。砂浜にあるパラソルの下で家族ちょこっとたたずみ、冷えたアクア(バリ島で売っているミネラルウォーター)を飲む。 「スキューバの説明スルネ。シャチョサンタチ、コッチコッチ」誰にでも社長と呼ぶオーナーに案内されたのは海の家の中にある暗い部屋だった。そこには所狭しとスキューバ道具が置かれている。スキューバのインストラクターは日本語ができないらしい。見た目はエディと同じハワイアン系の顔で、体格が良かった。片言の英語と大袈裟なジェスチャーで説明が始まる。「コワクナイ」だけは日本語だった。 まず、日本語で書かれた「潜り方の基礎」みたいなマニュアルを渡され、合図の練習をする。上、下、危険な時は手の甲を上下に回転させる。鼻を摘んで耳から水を抜く耳抜きの方法、他にいくつかあったがごく簡単な事だった。視力のついた水中眼鏡を借り、次にマウスピースのくわえ方。奥歯で噛んで大きく息をする。息を吐くのは楽だが吸うのがなんか違和感あった。しかし練習とは言え、家族がくわえたマウスピースを使い回すのは、、、家族の最後にマウスピースをくわえるのだけはちょっといやだった。 何となくスキューバの基本が分かって来たところで手渡されたウェットスーツを着る。初めて着た。俺の痩せた体だと隙間ができるのではないか心配したが、ぴったりフィット、というか股間のあたりが妙にきつい。足ヒレを持って家族全員ボートへ向かう。この時、ものすごい緊張していた。なぜなら俺は泳げない!引き返せないかあれこれ言い訳を考えている間に屋形船のようなボートに乗せられた。 |
![]() パラソルの下でまったり 野良犬が暑そうにうろうろ |
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| 最初にトモキとアサコが海の中へ。「さあ、写真とってあげなさいよ」と母にカメラを渡されるも、気持ち悪くてうまく写真が取れない。そのまま二人とも海の中へ引きずられていった。しばらくは泡で位置を確認できたがもう、どこを潜っているかわからない。「気持ち悪い」と船内で横たわろうとしたら無口な船頭さんが枕にするようにとジェスチャーの後、浮き輪を貸してくれた。 15分ぐらい経ってからか、トモキとアサコが水面に戻ってきた。相変わらずトモキは「すげー楽しい!」と最高の笑顔で船に戻る。一方アサコはうらめしやと言わんばかりにぬれた茶色い髪の毛をダラーっと前に垂らし、船に戻るや倒れてしまった。やばい!と思った。単に海の中で酔ったらしい。「あなた船酔いなんだから先にやりなさい」と母に進められて次に俺と父の番。 恐怖と船酔いのまま、水面へとはしごを伝って海へ入る。辛うじて顔を水面から出し、「助けて…」と心の中でずっと叫びつつ、インストラクターという海の悪魔に引きずられていった。「俺死ぬんだ…」本気でそう思った。頭の中が真っ白になった。 恐怖を通り越して全く力まなかったのがとても良かったみたいだ。呼吸も問題無い。聞こえるのは自分の呼吸音だけでとても静かだ。その中をインストラクターが引っ張っていってくれる。不思議と海水に入ると恐怖心が無くなった。イママデ経験シタ事ノ無イ世界…体中の力は抜けているのだが何か大きな力で支えられている感覚。 インストラクターが何かを指している。魚が岩陰に隠れた。珊瑚をつかむようにジェスチャーし、手を珊瑚に導いてくれた。硬い。やわらかいスポンジのようなものだと思っていたがとても硬く、繊細な彫刻のような感じがした。両手で珊瑚をつかむとインストラクターは1人で行ってしまった。「ちょっと待って」と彼についていこうとして珊瑚礁から手を放すと海流に流される。慣れていないせいか足につけたヒレが全く役に立たない。潜る前にすでに死を覚悟していたので「ああ、ここで死ぬんだ」なんてのんきに考えていたらあらぬ方向、つまり上から突然現われて何かを俺につかませた。野球ボールくらいの巻貝。 また手を引かれていく。少し下がると水が冷たくなってきた。「痛っ!」耳がバキバキと音を立て、激痛が走った。ちょっと潜っただけで水圧の変化をダイレクトに感じる。ものすごく耳が痛い。死を覚悟していたはずなのにものすごい動揺してしまった。手の甲を回転させて非常事態である事を伝え、耳を指差した。彼は鼻を摘むジェスチャーをする。そうか耳抜き!すっかり忘れていたので一生懸命耳抜きをした。すると一応痛さを我慢できる程度に回復。 崖のようなところをゆっくりと降りて行く。だんだん海の中は暗くなって周辺があまり見えなくなった。多分さっきの珊瑚から10mも進んでいないはずなのだが雰囲気が全く違う。インストラクターに身を委ねているのでどこへでも連れていってという感じだった。 ふと、彼はどこからかビニール袋を取り出し、魚の餌らしきものをまき始めた。もしかしたらテレビで見た事のあるように手のひらに魚がいっぱい集まってくるのでは!?とちょっと期待したが、周辺に魚はいなく、彼はしばらく粘ったのだが海が濁っただけだった。くるっとまわりゆっくりと上へ上がっていく。またぬるい海水に戻り、痛かった耳がパキパキと鼓膜を鳴らしながら治っていく。明るくなってきたと同時に海面に頭を出していた。あんなに静かだった海中とは違い、波やボートのきしむ音、みんなの声がとても大きく聞こえる。ボートのはしごにしがみつきながら足ヒレと酸素ボンベを外し、船へ上がった、と同時に「すげー楽しい!」とトモキとおんなじ事を言っていた。 結局、母は船酔いと海酔いでグロッキーなアサコを介護するため潜らなかった。だからか、とても笑顔だ。一方、あれだけ船酔いで気持ち悪かったはずの俺とトモキは「最高だよ!日本でスキューバ始めようぜ」と興奮。父は「いやー良かった。」とにこやかだった。 気がついたらさっき海の中で手渡された巻き貝が動いた。うわ、生きている!海へ返そうとしたら、手渡してくれたインストラクターが初めて「オミヤゲ」といった。結局陸まで持って帰った。興奮は全然冷めず、砂浜に戻る時に一緒に潜ってくれたインストラクターに握手を求め、「Thank You!!」「Very Nice!!」と何度もいった。その彼の着ていたウェットスーツはぼろぼろで肩の部分が大きな穴があった。 |
![]() ダイブ5分前 やる気満々のトモキ(右) すでに船酔いで グロッキーの俺(左) |
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