初日(17日水)
1−3

■入国手続(パスポート紛失)

 早速パスポートを準備してイミグレーションを通過。トモキが自分のパスポートを探している。全く、準備しておけってよ、なんて気楽に考えていた。トモキは大胆に手荷物を全て床に出して探しているが見当たらないらしい。「機内に落とした。」そう言ってダッシュで戻っていく。家族全員で「しょうがねえなあ」なんて気楽な会話をしていたが、戻ってくるなり険しい表情で「無い」と一言。父の手提げカバンの中も捜す。父が家族分のチケットをもっていたため、そこにあるのではないかと必死で探した。

 だんだんみんな不安になってきた。俺とアサコと母はすでに出国手続きを終えたため、トモキとはゲートを隔てて離れている。機長やスッチー達もチェックを済ませていく。すでに30分以上経った。その間にみんなの荷物は届いた。しかし荷物検査が済んでいないため、飛行場から荷物を出せない。荷物カードをトモキがもっているのだ。パスポートさえ出てくればすぐにでもホテルに向かえるのに、、

 
父の「ガイドが外にいるはずだから事情を話してきて」の言葉にとりあえずガイドを探しに外に出た。うわ、蒸し暑い!考えてみればもう赤道直下だ。タクシーの呼び込み達がへんてこな日本語で押し寄せてくる。困ったと思っていたらあからさまに「JTB」のロゴがプリントされた赤いアロハ服を着たアジア人の男女が2人いて、「ニシモトさんですか」と流暢に話してきた。日本語が通じそうなので、とりあえずゆっくり説明したら、向こうは「え、パスポートを無くしたんですか?どこでですか」なんてぺらぺらと喋ってくる。驚いているとすぐに空港内に行きましょうと連れて行かれた。

 戻ってみるが事態は変わらず、父が許可されてゲートの中にいた。すでに同じ飛行機に乗っていた人たちはそれぞれホテルに向かったらしく、空港はがらんとしている。事態を把握していない空港関係者は笑ってこっちを見ている。気がついたら1時間が経っていた。一生懸命インドネシアの言葉で空港関係者と連絡を取っては日本語で説明してくれる。さすがに周辺の人たちも不安になり、空港関係者の笑いはもう無かった。父が必死に英語で説明している。今度は父とトモキ2人で飛行機に戻って探したが見当たらない。しまいには俺も事情聴取を受ける羽目に。片言の英語で説明し、男のガイドさんに事情を説明してもらった。書類にサインを書こうとしたらガイドに「ワタシガカキマス」とむっとした顔で急にペンを取り上げられた。どうやら、左手で書くことがいけなかったらしい。バリはヒンズーの国だからか。

 ゲートの近くでトモキを見ていたら、「OK. You go.」と中へ入れてくれた。すかさずそばへ行くと父とトモキのちょっとした口論になっていた。「どこにしまったんだ」「親父のカバンに入れたはずだ」そんな感じだが、こんなに動揺している弟トモキを見たのは初めてで、こっちもどうしていいか分からず、母とアサコのところに戻る。「困ったねえ」と本当に困った様子の母。アサコは「あー、疲れた」と早く出たい様子。

 しばらくして、ガイドさんが悲痛な顔で「息子さん、今日夜の便で日本に帰らなければなりません」と通訳してくれた。最悪の事態だ!パスポートが無いと入国できない。すでに南の島に着ているというのに、、、。そのあと、大阪行きか、名古屋行きの便どちらかにするかこれから会議を行なうのでしばらく待つようにともいわれた。みなガッカリしてしまった。結局弟はバリの蒸し暑さも感じることなく戻されてしまうのかと思うと可哀相になった。

 空港関係者は家族に優しくしてくれて、すんなりとゲートの中に入れてくれた。落ち込んでベンチにうな垂れているトモキのそばによって話し掛けた。「今年はしょうがない。来年な。その時はおまえが企画しろよ。」すごいクサイせりふがすんなりと出る。「ああ、本当すまん。」低い声の返事が悲しかった。その後少しだけ会話をしたが、何年ぶりのまともな兄弟の会話だったのだろう。嬉しかった。

 外にいる母のところに戻り、出発まで空港で待つことに。どうやら名古屋便で出発は午前1時を過ぎるらしい。「せっかくみんなで来たのにな」とぼそっと行った瞬間、母は泣き出してしまった。余計な一言だった。この時すでに23時を過ぎていた。

 荷物検査員も既に帰宅したらしく、家族の荷物は検査無しで外に出せた。「外に荷物置場があるから使ってくれ。」と空港関係者が教えてくれた。どこだろうとみんなの荷物を載せたカートで探しに行ったが見当たらない。タクシーの呼び込みももういない。しばらく蒸し暑い外をうろうろしていたが分からないので戻ると事態は急変していた。


 ゲートの外にトモキがいる!笑顔だ!ぼろぼろ泣いている母に「Dont Cry」と空港関係者が笑顔で声をかける。さっきまでトモキのいたゲートの向こうには空港関係者が大勢見えた。状況が全くつかめずにいると父が「パスポートを出国後に無くしたことにしてくれたんだよ」と嬉しそうに説明してくれた。かつてバリ空港でこのような事態が起こったことはなく、もし日本に戻っても大変なことになるだろう、という事らしい。

 既に日付が変わっていた。ここで男のガイドさんとは別れ、ホテルまでを女のガイドさんが案内してくれた。もう出国できたことに家族中興奮しており、「サンキュー」やら「ありがとう」を連呼。一番トモキが嬉しそうだった。s



 ホテルに着いた。なんか異様な雰囲気。というか、すごいゴージャス!エントランスを抜けるとライトアップされた池とプールが!そして大理石の床と大きな屋根。天井には民族絵画がびっしり描かれており、「すげー」の連発だった。夜中なのに笑顔の受付カウンターの人々。民族衣装を来たボーイさんが部屋まで案内してくれた。広くて大きなベッド!こんなホテルは初めてだ!みんなあまりに興奮していたため、ボーイさんにチップを渡せず、しばらくしてしまったなあ、なんてのんきに笑った。とりあえず部屋の冷蔵庫からビールを出して乾杯!とてもおいしかった。

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