インド初日(3)
デリー駅まで着くと、もう安心できた。
あとは宿を探して、寝るだけだ。すでに夜中の3時であったが、「あとは寝るだけ」と思うと、今までの苦労も、疲れも忘れる。デリー駅から宿のありそうな方角に邁進する。インド歴3時間の三人は少しの緊張感を残しながらも、あと数分後に迫る「睡眠タイム!」に期待を寄せ、早足でまだ知らぬ宿屋へ向かった。
どちらの方向に宿があるのかは分からなかった。ただ、そのとき一緒だった一人によると、そのあたりは宿が多いため、目をつぶってても宿が見つかるという話だった。三人は初めに目に付いた道を歩いていたのだった。
歩き始めて1分、道路は真っ暗闇だった。日本のように、そこらじゅうに街灯があるわけじゃないので、それは当たり前のことであるが、暗闇に恐怖を感じるのは3人とも同じのようで、自然と三人は近づき、かたまって歩いていた。少しずつ不安を抱きながら、道を進んでいた。
「なんか、ちょっと、雰囲気、よくないなぁ」
完璧な静寂の中、僕はこう言った。すると、他の二人もそれに同調するように頷いた。怖がっているのは一人じゃなかったんだ!そう思い、後ろに続く二人を見た。しかし・・・、後ろに続くのは二人ではなかった。
よく見ると十人以上のグループになっていた。さっきまで、暗闇の中で寝転がっていた数人が、後からついてきているようだ。どうして彼らが後をついて来ているのかは分からない。だからこそ、三人の不安は一秒ごとに増大して行った。「彼らの目的は何なのだろう、どうして後ろをついて来るのだろう、どうして何も言わずについて来るのだろう・・・」
それから10分ほど、街灯もないデリーの通りを歩いた。そして、悪くなさそうな宿が見つかった(このときの感覚で言えば、悪くない、というのは値段が高くなく、かつ、危なくない、ということである)。よく分からない人たちが、後ろにたくさんついて来たが、トラブルなくベッドに横になれそうだ。ほっ。
「三人で、一泊、Rs.150です」
僕らはこの宿代に応じ、キーを受け取った。すると、駅付近からついて来たインド人の一人が、ヒンディ語でゲストハウスのレセプションに話しかけていた。僕らはキーを持って、部屋に向かう階段を昇り始めた。その時。
「ミスタル、三人で、一泊、Rs.200だった」
突然の宿代変更にわけがわからないでいたが、その理由を尋ねると、こうだった。
「この人がお前をこのゲストハウスに連れてきてくれただろ?ホテルとしては彼らにコミッションを払う必要があるんだ」
やれやれ。誰が僕らをここに連れてきてくれたって?自分で見つけたんじゃないか。暗い中勝手についてきて、金をとろうというのか。ふぅ。あきれたもんだ。
「ジェントルマン、彼らを連れてきたのは僕のほうだよ。コミッションは僕がもらうべきじゃないか」
そう言い捨てて、僕らは部屋に入った。翌朝、僕らはRs.200の請求書をもらい、にこやかにRs.150を支払い、宿を後にした。