インド初日(2)
タクシーに乗り、3人はほっとした。
あとは宿を探して寝るだけだ。僕らが乗りこんだタクシーは「プリペイド・タクシー」というものだった。つまり、少し高い(のだとおもう)けれども、前金制で、降りる時にもめる心配がない、という安心のサービスなのである。夜遅いし眠いしインド人うるさいし、ということで「安心」だというこのタクシーは、インドに初めて来た3人を「安心」させた。。
タクシー運転手のドライビングテクニックは最高だった。うん、そうだ、運転はうまいんだろう。だけど、運転が荒すぎる。アクセル全開、急ブレーキ、アクセル全開、急ブレーキ。。。他に走っている車も全てそうだ。「あ、ぶつかるっ!」と思うことはインドの道を走っていてよくあることだが、初めてインド風運転を体験したとき、生きた心地がしなかった。
30分ほど走ると、道路がすいてきた。これなら交通事故の危険もなさそうだ、と思った。車は快調に目的地のデリー駅へ向かっていく。ようやく安心感を持て、疲れもあったのでうとうとし始めた。
キキキ#・・・・。急ブレーキで目が覚めた。広い道路の真中に車は停まっている。なんだ?と思っていると、運転手が振り返り、ニヤつきながら言った。
「ここから先はRs.50必要です」
もちろん、その金額に根拠があるはずはないし、単にインド初参者の僕らからボろうとしていることは明らかだった。
「金を払わないなら、ここで降りてもらう」
プリペイドタクシーでさえ、こんなことをいうのか!と僕は非常に驚いた。と同時に、真夜中で眠いし、気を張って疲れているのに、早く行きやがれ、と怒りがこみ上げてきた。そんなとき、さっき空港で会った日本人がこう言った。
「いいよ、Rs.50って日本円で150円だろ。俺払うからさ」
この一言で僕はついにキレた。お前みたいなことを言うやつがいるから、日本人がナメられるんだ。ボられているのに、文句も言わずに、黙り込むな!
一瞬、車内が沈黙した。そして、ドライバーが再び口を開いた。
「フィフティルピー」
その瞬間、僕は彼を睨みつけ、大声で叫んだ。50ルピーだと?すでにいくら払ったと思ってるんだ?50ルピーはらわなければ先に進まないというのなら、それでも結構。自分で運転していくから、お前が車を降りやがれ!
僕の言葉に、マカオ人が続いた。英語のスラングで、激しく文句を言っていた。しばらくすると、運転手は前を向いて運転を始めた。鼻歌を歌い、時々僕らに話し掛けた。さっきまで僕らに金を請求して、僕らとドライバーの間には気まずい空気が流れているはずなのに、彼はそんなことは気にしていないように思えた。
20分ほどして、車はデリー駅に着いた。僕らがタクシーを降りるとき、上機嫌なドライバーが言った。
「すばらしいインド旅行を!」