インド初日(1)
前の話から少し時間は戻るが。
インド初日。初日、というのは本当に初日で、初めてインドの大地を踏んだその日のことである。
デリーのインディラガンジーインターナショナル空港に着いたのは、草木も眠る丑三つ時。しかしインド人は眠っていなかった!「チェンジマネー」「ミスタル」「タクシー」「ジャパニ」・・・ウルサイ声が四方八方から飛んできた。「噂どおりとんでもないところに来たな・・・」僕は心の底で不安を感じながらもニヤリと笑っていた。でもやっぱり、90%以上は心細さで占められていた。「どうしてこんな時間に着く飛行機を選んだのだろう」
僕がバンコクからデリーに乗って来た飛行機はSU(エアロフロート)だった。こんな路線をロシアの航空会社が運行していること自体、意外に思う方が多いであろう。しかし、本数は少ないものの確かに運行している。乗客は異常なほど少なかった。値段は驚くほど安かった。エコノミークラスのシートはリクライニングができず、その代わりに、シートの背の部分を完全に前に倒すことができる。つまり、背もたれに前方に向けて力を加えた場合、シートが片付く。飛行機が加速して離陸した直後に、乗客の座っていないシートのほとんどが前に倒れた。シートの構造上、そうなるのは当然なのだが、初めてその様子を見る者にとっては、恐怖以外の何ものでもない。空席である、9割以上のシートが、一瞬で前に倒れたのだ!離陸直後に何が起こったのか!
飛行機が上空で安定し始めると、それでもそれなりに安心できた。確かにスチュワーデスは全員クマのようであったし、スチュワードは慇懃で、気持ち悪かったが。トマトジュースを一杯頼んだたけで、「Especially
for you」という言葉とともにウィンクまでくれた。唇も動いていた。僕はホモではないので余計なサービスはいらない。
途中、謎の爆発音と衝撃で飛行機が一度大きく揺れたが(原因は不明。説明は一切なかった)、飛行機は無事に到着していた。飛行機は一分も遅れることなく、到着した。
実は、僕は飛行機が遅れると読んでいた。SUが遅れないはずはない。数時間遅れれば朝だし、もっと遅れてもいいと思っていた。しかし、出発・到着ともに、まさにON TIMEであったのだ。こうして真夜中にデリーに放り出された。
デリーと言ってもどこに行けばよいのかもよく分からない。途方に暮れていたが、ふと到着案内を見ると、こんな夜中にロンドンからのUA(ユナイテッド航空)便がまもなく到着すると書かれていた。その便の到着を待ち、乗客の中に同年代の東洋人旅行者を見つけると、声をかけた。一人はマカオ人大学生、もう一人は日本人のおっさん(本当は大学生だった)であった。仲間もでき、孤独感が消えた。
三人でタクシーをシェアし、デリー初日はなんとか無事に切り抜けることができた・・・な〜んてことはやっぱりなかったんですな(泣)。次回へ続く。