「学びは義務ではなく楽しみ」
[書評]深田尚彦著『人は皆、急ぎ足の旅人』
人類は空間を移動することで経験を積み、経験が知性を掻き立て、その知性が文化を構築してきた。生きるために、そして、楽しむために、移動=旅を繰り返した結果、今の世界がある。一方で、空間の移動を伴わない別の旅もある。一所に座したままでも、身体で風や音を感じ、心で回想する。時間は、休まず動き続ける。ゆえに、人は皆、空間と時間の旅人である、と著者は言う。
本書は、旅を始めて80年以上、教育・研究に関わって60年以上の“人生の大先輩”が、自らの旅について書いた本である。ときに空間を越え、ときに立ち止まって時間の流れに身を任せながら、これまで考えたことを回想している。そして、過去を想起する過程で、さらに新たな発見をしている。
幼い頃から今まで、暇を見つけて読書を続けてきた著者は、読み継がれてきた名著から、先人が人生で得たものを学んだ。また、教育者としての著者は、教育とは、先人の経験からよき社会的資産を選び、後進に渡すことだと定義した。
「学びは義務ではなく楽しみ」と一人で気づくのは難しいが、教育や読書は人類が蓄積した知恵という遺産を身につける近道だ。価値ある「古人との対話」ができれば、人生という旅はより面白くなる。「学ぶとは文化を取り込んで良く生きることだ」。空間と時間の旅を通じて、そう考えた著者は、これから長い旅をする若者のために、自らの思考方式を本書に著した。(岳洋社、2006年3月、2625円)【了】
■関連コンテンツ
livedoor ブックス