激安チケット発見!

冬休みの課題をこなすため部屋にこもっていた。
こもっているからといってずっと勉強をしているわけではない。集中力を維持するためには、たまには気分転換に外出するのがいいのだろうけど、終わりの見えない課題に取組んでいるとき、なかなかそういう気分にはなれない。気がつくと3日ほどフラットから出なかったりもする。一番長い移動が、キッチンまでの十数メートルだったりする。

気分転換はもっぱらネットサーフィンでする。情報の洪水の中は、いくら突き進んでも終わりが来ない。無意味に数時間を過ごしてしまう。極めて不健康であるが、課題に取組んでいなくても「机に向かっている」という状態を維持することが自己満足を満たすためには必要なのである。そして、一日が終わると愕然とする。「一体今日、僕は何をしたんだ?」

机の前には窓がある。全く美しくない風景が見える。
冬のイギリスの天気は変りやすい。灰色の雲が町全体を覆っていると思ったら、太陽が顔を出すし、晴れていると思ったら、雨が降る、霙が降る。天気の影響を受けて躁鬱病になる人が多いのも頷ける。しかし、窓のこちら側は何の変化もない。室温はほぼ一定、ラジオは毎日、同じような曲を繰り返す。そして、課題の進捗状況にも変化がない。

外に飛び出したい衝動は高まるばかりで、サーフィンの行き先だけは次第に外に向かう。あてのない旅路。無意味な時間。しかし、意味と言うものは無意味の集大成である。目的を持っていなかったはずの航海であったが、突然、目の前にゴールを見つけた。

「アムステルダムまで、1ペニー!」

内にこもっていた衝動が一気に爆発した。発見からものの5分もしないうちに、僕はアムステルダム行きのエアチケットを手に入れた。
帰りの航空券は19ポンド(約3800円)で売られていた。安値で釣ってしっかり払わせるJet2のマーケティング戦略である。飛行機代としてはそれほど高くないものだが、僕は復路は買わないことに決めた。ヨーロッパで一番安い交通手段である飛行機に、1ポンド以上払うなんて、もったいないからだ。

外界へのチケットを手に入れると不思議なものである。さっきまで先の見えなかった課題に光が差し込んだように感じられる。もちろん、エッセイの締切日が変わるわけではないのだが・・・。
気分はすでに欧州大陸に飛んでいった。

>>ビールと風車

 

 

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