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ブラッドフォード大学大学院 体験記
(MA in Peace Studies, University of Bradford)
平和の手紙
美紀
世界遺産のDVDは音楽もきれいだし、映像もいい。
ときどき流すことにするよ。どうもありがとう。
テロがどんなに怖ろしいかというのを知っても、ほとんどの
人は自分の問題として捉えないものだよ。自分の身近で
起こらない限りはね。自分が使っている駅に爆弾がしかけられる
確率はものすごく低いし、それよりも毎日しなければいけないこと
(仕事とか)に気持ちが向かうのは当たり前だと思う。
東京だって、地下鉄サリン事件というテロ事件があって、そのあと
しばらくは騒いだけれども、今じゃすっかり忘れてる人も多いだろう。
オウム真理教は実質的に活動ができないけれど、オウム真理教を
生んだ社会背景は改善されていないのに。
世界中でたくさんの悲劇が起こっている。俺は平和学の勉強を
しているから一般人よりもそのことを知識としては多く知っているから
イラクだけでなくルワンダとかアフガンも見なきゃ、なんて事を言ったりも
するけれど、見落としていること、見えないことのほうが多い。
世界の出来事はたくさんありすぎて全てを把握するのはほとんど不可能に
近い。でも、自分の日常生活だけでなく、自分の日常生活に影響を
及ぼすかもしれないことを一人ひとりが少しでも考えておくことが大切じゃない
かと思っている。自分の関係者が幸せであってほしいと願うことが第一歩で、
自分と関係するかも知れない人についても幸せを考えることが進歩だと思う。
俺だって世界の平和を考えたいとは思っているけど、それぞれの事象を
現実のものとして捉える以前に、知識すら持ちきれない状態にある。
世界中の紛争についていっぱしのことを言えれば格好いいかもしれないけど、
世の中は広いので、多様すぎるほど多様な世の中を単純化しないと
決して世界平和について考えることはできない。でも、その単純化こそに
問題が含まれているのではないかと確信している。個人間の違いが
宗教間の差よりも大きいことも多いのに、「日本人」とか「あいつら」とかで
くくらないと世界全体の平和を考えることはできない。「善」と「悪」で
世界を単純化・相対化しようとしているブッシュがその最たる例だね。
世界情勢について考えたり、民族や宗教について研究したりすることは
必要だし重要なことだと思うけれども、それだけでは世界はいつまでも
平和にはならないと思う。平和について考える学者を増やしても、
世界を単純化・相対化する方法論が増えるだけで、その過程でつぶされた
個から新たな問題が発生するだけだ。
まず自分の幸せを願い、周りの人の幸せを願い、それを実現するために、
もう一歩だけでも外側の人のことを想う。その連鎖がより平和な世界に
つながると思う。今の俺は世界平和だと大見得を切ることよりも、小さな
連鎖をどうしたら作れるかに大きな興味がある。
マドリッドの爆弾事件は美紀にとっていいきっかけだったのだと思う。
世界全体の悲劇のことは必ずしも見る必要はないと思う。でも、身近に
思えた悲劇をいつまでも記憶しておこう。
911も西側に住む人にとってすごくいいきっかけだった。テレビでよく見た
ことのある(または訪れたことのある)WTCビルがなくなったのを見て
多くの人がショックを受けた。不謹慎を覚悟で言うと、3000人というのは
世界の悲劇に比べてあまりに小さい。しかし、自分の生活と関係している
ところで思いがけないことが起こりうることを示したという意味で
911はとても大きな出来事だ。
「誰がやったのか」をニュースから教えられることではなく「どうして起こったのか」
「それはどう自分に関わるか」を考えてみることは有意義だと思う。
全ての人が日本はどうするのかを論じる必要は必ずしもなくて、でも、
自分はどう思っているのかを真剣に考えるべきだと思う。
911もバリもイスタンブールもマドリッドも、世界がより平和になるための
ものすごいチャンスなのだと思う。同様のことが世界のどこででも再発して
ほしくはもちろんないけど。
水面下で少しずつ大きくなって大爆発を起こすかもしれなかったものが
WTC程度の被害で噴出したことは、その事件が起こってしまった今、
幸運だったと考えたほうがいいのかもしれない。
こうした「テロ事件」が戦争の始まりなのか、平和の始まりなのか、
それを決めるのは政府でも学者でもなく、個々人の権利であり、義務で
あると思う。
長くなった。読んでくれてありがとう。
美紀もよい週末を!!
恭
----- Original Message -----
From: "miki"
To: "Kyo"
Sent: Thursday, March 11, 2004 2:50 PM
Subject: マドリ
> 恭
>
> 第2弾の荷物も無事届いたようでよかった。
> DVDはゆっくり見てね。映画と違って何度みても飽きはしないと思うし。
> 映像のほうは短すぎて不完全燃焼かもしれないけど、データベースのほうは
> かなり見ごたえあると聞いたから、そのへんも息抜きにいろいろ見てみてください。
>
> さっきマドリードでテロがあったニュースを知って驚いてるよ。
> 列車(地下鉄でなく)の爆弾テロで死者170人以上。
> さっきからネットのニュースで追っています。
> 地元紙はETAの犯行と断定してる調子だけど、まだ分からないね。
> ETAのスポークスマンは「アラブ系テロリストの犯行」と声明しているようだけど、
> どうなんだろう。
> 3月11日ってこともあるし、いろいろ憶測してしまう。
>
> こうやって、自分の住んでいた/知っている地域で起きたことだからと
> 一生懸命情報を追ったり考えたりしている自分に気づいて、やはり身近なところにで
> そういうことが起きないと心動かされないんだろうかと、少し考え込んでしまった。
> 確かにリアリティという意味や、思いを寄り添わせやすいという意味では、
> 自分と離れた見知らぬ地域での出来事よりも揺さぶられやすいというのは本当だと思う。
> 世界中で起きている紛争や世界の平和を考える恭や、離れていてもその地域やその
> 人々に思いを添わせ活動しているたくさんの人からしたら、これひとつに動揺してことさ
> ら
> 気にかけようとする私は、「世界にはもっとたくさんの悲劇や理不尽が起きているのに
> 目を向けていない」と思うかもしれないね。
> でも逆に、こんなふうに少しでも自分の記憶とともにある地域や人々のことを気にかけ
> たり心を痛めたりしたことは、全体から見たら木を見て森を見ないちいさな(ある意味
> 愚かな)動きかもしれないけど、例えば私はそういう滞在経験がなければ足を止めすら
> しなかったかもしれないし、それを思うとこうしたことも小さな一歩かも知れないと思
> う。
> ただ、いろいろなことを身近に考えられるようになるにはあまりに程遠い、と思って、
> 同時に少しショックだったことも事実。
>
> 難しい・・。
>
> ちょうど今読んでる本がスペインを舞台にした半分史実に基づいた小説で、
> ナチス・ベルリンオリンピックの時代から現代までを背景としたさまざまな活動家・団体
> ・
> 組織がとりあげられ、その中で病むスペインの病巣のひとつとしてETAも出てきていた
> ので、それもあって余計に衝撃的だった。
> ちょっといろいろ思い巡ったので、筆をとってみた次第だよ。
>
> それでは、またね。
> よき週末を!
>
> 美紀
>
> PS:日本のニュース(TV)では全然やらないよ・・・さっきから見てるけど。
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