グレンダロッホ へ

 

 ここまで行動を共にした二人はこの日で帰国するため、今日からは一人旅。
 朝食の時間に待ち合わせをしたのだが、二人とも来ない。どうやら寝坊したらしい。二日間、僕のペースで行動したからきっと疲れたのだろう。食後一度ドミに戻り、もう一度食堂に出かけると二人が来た。(お陰で朝食を二回も食べれた!内容はこれ以上考えられないぐらいみすぼらしいものだけれど・・・)
 その後、別れを告げ、一人で歩き始めた。

 グレンダロッホ行きのバスはダブリンに一つしかないバスターミナルからは出ていない。ユースホステルの受付で聞いてみると「ステファンズグリーンの近くのRoyal College of Surgeonsの前からバスが出ている」と言われた。持っていたガイドブックにもそのようなことが書かれていたので、とりあえず向かってみた。
  しかし、当該の建物の前は工事中だし、そのカレッジの受付やら付近にいる人に聞いても誰もそのバスのことを知らない。よく分からないし行き先を変えようかとも思ったが、しばらくうろうろして市内ツアーバスの受付係の人に聞いてみると「ハーフイレブン(11時半)にそのへんから出るよ」と言われた。半信半疑ながら「そのへん」で待っていると、15分遅れぐらいでバスは来た。プライベートバスとは言え、こんなの普通分からないぞ・・・。

 バス内では熟睡。1時間半ほどでグレンダロッホに到着した。「これだ」と思った。これこそイメージ通りのアイルランドだ。山の中に湖があり、空気がおいしい。雲は重そうで今にも降りそうな状況ではあったが。

 ツーリストインフォメーションでユースホステルの方向を聞き、歩いた。とてもきれいなユースホステルだった。en-suiteの六人ドミで14ユーロ(1800円)。なかなかいいぞ。シーズンオフなのでほとんど宿泊客がいない。この日は同室に僕を含めて二人。翌日は三人だった。

 荷物を置いて湖に出かけた。天気は悪いが気分はいい。高い山の斜面に覆われた二つの湖は晴れていても黒く見えるらしいが、霧の白さと対照的で美しい。小高い丘を見つけたので、簡単なトレッキングコースに挑戦することにした。

 案内板を見て「Spinc(short route)」と書かれたコースを見つけた。shortとは言っても5kmのコースで所要2時間と書かれている。たまに雨がぱらつくのでかなり迷ったのだが、せっかくここまで来たし、この国の気候を考えると翌日も天気がよいはずがないと思い、行ける所まで行ってみることにした。時間はまだ3時前だが、今にも日が暮れそうだ。焦りもあって、小走りでトレッキングコースを一気に駆け上がった。
 コースはしっかりと整備されているもののときどき木が異常なほど生い茂っていて、真っ暗な部分もあった。女性の一人歩きはかなり危険だろう。ブラッドフォードではないので男の一人歩きは大丈夫だろうが。* 30分弱で小高い丘を登りきった。霧がかかっていたが、二つの黒い湖(Upper LakeとLower lake)が小さく見えた。高低差が280mあるというのでかなり息切れしていたが、これはすごい。絶景だ。来てよかった〜。

 展望台にいると雨が少し強まってきたので大慌てで下山した。雨はそれほど長く続かなかったので、下山後はLowerLake周辺の小道を散策した。ダブリンもいいけど、田舎はもっといい。やっぱり山の近くで育ったからなのかな?

 ユースホステルに戻ると、同じドミにオーストリア人のトーマスというのがいた。通貨も運転免許も共通だし距離もちかいので、気軽に旅行できるという。EUってなんだか素敵だ、そして近い外国に対する彼らの感覚が不思議でもある。日本は海を越えないと外国には行けないし、近隣の国でもビザ手続きが面倒だったりするし(最近中国とベトナムは観光ビザが免除になったというのはすごい進歩だ!)、現状では恐くて行きたくないような国も近くに存在する。
  夕食は近くのきれいなホテルで食べた。シーズンオフなのでユースでは夕食を提供していないし、近くにレストランはないので他に選択肢はなかった。トーマスは家から持ってきたというスープの缶詰(それだけで足りるの?)を夕食にしていたが、僕はなにも持ち合わせがなかったので止むを得ない。持っている現金も少なく(ダブリンで利用できるATMが見つからず、20ユーロぐらいしか残ってなかった!)、カードで支払えるのはありがたかったが・・・。野菜たっぷりのビーフパニーニが9.95ユーロ。高いけどなかなか美味しかった!
 食後に「一杯だけ飲もうか」とトーマスに誘われ、ホテルレストランの隣のパブへ。 しかし、旅人が二人、話を始めて一杯で終わるわけがない。結局パブで5時間近くもしゃべって、ギネスを8パイント消費した。残金は10ユーロを切り、最後の方はクレジットカードで支払っていた。小額でもカードを受け付けてくれるところがヨーロッパのいいところ。

 ユースからそのホテルまでは200mほど歩かなければならないが、その間には一つも明かりがない。行きは「何も見えないなぁ」などと言いながら歩いたのだが、帰りはなんだか明るかった。「Guinness brings the power in you」とはよく言ったものである。

 

* ブラッドフォードはカシミールからの移民が多く、カシミールでの紛争をそのままここに持ち込んでいるという話があります。カシミールでの紛争を原因にした殺人事件が結構起こっているという話もあるし、男も女も拉致されてカシミールに連れて行かれ、現地で結婚させられるという噂があります。どこまで本当なのかよく分かりませんが・・・。

 

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