AnotherWorldCup
2002夏:佐谷恭

もう一つのワールドカップ

「一つだけ心残りがあるんだよ」
5月初旬のある夜、自由が丘のカフェで、僕はつぶやいた。

シルクロード経由でイスファハンに向かうという計画は、自分自身の満足度として非常に高いものではあったが、時期を同じくして開催されるワールドカップのときに、日本を離れることが少し残念でもあった。
僕は小学生のとき、サッカーチームに入っていた。キャプテン翼が始まる以前にチームに所属したぐらいで、単なるミーハーではない。また、ワールドカップを機に、多くの外国人が日本を訪れるので、いろいろな知り合いをつくるチャンスでもある。パーティとサッカーが大好きの僕はこのお祭りを最高に楽しめるに違いない。

サッカー見て、酒飲んで、大暴れ!僕はフーリガンではないが、この機会を利用できないことが心残りだった。しかし、そんな悩みをイナバが一言で片付けてくれた。
「ワールドカップ見れないなら、ワールドカップしてきたら?」
「!」

驚くべき提案だと思った。
サッカーはボール一つさえあれば、どこでも楽しめる素晴らしいスポーツだ。それゆえ、世界中に広まり、人気を博している。行く先々で、サッカーをしよう。心のわだかまりは、完全に、消えた。

翌日、僕はすぐに日本代表のユニフォームを購入した。新郎新婦の二人が、ワールドカップの公式ボール「FEVERNOVA」をプレゼントしてくれた。そのボールに共にプレーした仲間からサインをもらい、オリンピックのトーチのようにして、大切にイスファハンに運ぶと言う新たな任務が生じた。

開会式の行われた5月31日、僕は天津行きの船に乗りこんだ。もう一つのワールドカップが始まった。

 

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